ニュースレター「サンゴ礁の自然環境」

2017年8月号

「サンゴの一斉産卵から見る環境の変化」
「サンゴの一斉産卵から見る環境の変化」
 今年の6月6日、沖縄県の瀬底島のサンゴが産卵しました。しかし、驚くべきことに産卵はその前後一週間で複数にわたり見られました。あれ?と思われたかもしれません。一般的に言われているのはサンゴの“一斉”産卵ですよね。そうなのです、実は過去数年で沖縄のサンゴの産卵は、一斉ではなくなってきているのです。今回はそんなサンゴの一斉産卵の実態についてご紹介します。 サンゴの産卵 サンゴは植物でもなく、岩でもなく動物です。そのためサンゴは産卵を行うことで繁殖を行います。一般的にはサンゴは初夏の満月の夜に産卵をするといわれています。この産卵がとても幻想的な光景であり、決まった時期にしか見られない貴重さもあることから、世間から広く知られるようになりました。
コユビミドリイシの産卵(2017年、瀬底島)
一斉産卵でなくなる問題と理由 そんなサンゴの一斉産卵ですが、これまで数日にばらけることは珍しいことではありませんでした。しかし過去数年で産卵のばらける度合が大きくなってきています。今年は沖縄県の瀬底島では約1週間にわたってサンゴの産卵が確認されました。また、昨年では産卵の予測日より2週間も早く産卵が確認されました。これまで以上に、サンゴの産卵日を捉えづらくなっているのが現状なのです。 では、何が問題で、何が原因なのでしょうか? まず問題は、同じ種類のサンゴで産卵日がばらけてしまうと、遺伝的な多様性が無くなってしまうことです。例えば、同じ種のサンゴでも、高水温に弱い群体Aと高水温に強い群体Bがいたとします。高水温に弱い群体Aと、高水温に強い群体Bの産卵日がずれてしまったら、群体Aは群体Bと交わることができません。つまり、群体Aの子供はずっと高水温に弱いままであり、白化して死んでしまいやすいサンゴなのです。 同じ種類のサンゴでも、群体によって環境に対するストレスの強さであったり、成長しやすさであったりは微妙に異なります。そのため、様々な遺伝子が混ざり合い、遺伝的な多様性が維持されることはその種類の生き物が存続していくうえでとても大切なのです。 次に原因です。断定はできませんが、いくつかの原因が考えられます。 1つ目は、やはり温暖化の影響。海水温が高いことにより、サンゴが産卵する初夏の海水温を感知しづらくなっているのではないかと考えられます。 2つ目は夜の明るさです。特に筆者がサンゴの産卵を観察した瀬底島周辺は、近くの市街地の街明かりが届くために暗闇にはなりません。そのため、満月の明るさや、満月から新月へと変わっていく明るさのリズムがなくなってしまうからであると思われます。一方で、沖縄県の慶良間諸島の阿嘉島では、街明かりをはじめとする人工光がほとんどないためか、サンゴの産卵はまとまった日に見られているようなのです。こうしてみると、夜の明るさがサンゴの産卵に重要であることが伺い知れますね。この先、サンゴの産卵はどのよう変化していくのでしょうか。。。 海と近いからこそ分かる変化 生き物の生態や不思議について調べていると、自然とどこかで人間の営みが関わってきます。それは良くも悪くも。サンゴという生き物を通じて、人と自然の共存がいかに難しく、課題であるのかを身近に感じました。それも自然あふれる沖縄だからこそ感じられる贅沢な疑問なのかもしれません。きっと誰しも、得意な事やずっと経験してきたことの中に、他の人から見たら大きな驚きのある疑問を持っているのではないでしょうか。比較的シリアスに書かせて頂きました。 執筆者 和泉 遼太郎
「サンゴの一斉産卵から見る環境の変化」
 今年の6月6日、沖縄県の瀬底島のサンゴが産卵しました。しかし、驚くべきことに産卵はその前後一週間で複数にわたり見られました。あれ?と思われたかもしれません。一般的に言われているのはサンゴの“一斉”産卵ですよね。そうなのです、実は過去数年で沖縄のサンゴの産卵は、一斉ではなくなってきているのです。今回はそんなサンゴの一斉産卵の実態についてご紹介します。 サンゴの産卵 サンゴは植物でもなく、岩でもなく動物です。そのためサンゴは産卵を行うことで繁殖を行います。一般的にはサンゴは初夏の満月の夜に産卵をするといわれています。この産卵がとても幻想的な光景であり、決まった時期にしか見られない貴重さもあることから、世間から広く知られるようになりました。
コユビミドリイシの産卵(2017年、瀬底島)
一斉産卵でなくなる問題と理由 そんなサンゴの一斉産卵ですが、これまで数日にばらけることは珍しいことではありませんでした。しかし過去数年で産卵のばらける度合が大きくなってきています。今年は沖縄県の瀬底島では約1週間にわたってサンゴの産卵が確認されました。また、昨年では産卵の予測日より2週間も早く産卵が確認されました。これまで以上に、サンゴの産卵日を捉えづらくなっているのが現状なのです。 では、何が問題で、何が原因なのでしょうか? まず問題は、同じ種類のサンゴで産卵日がばらけてしまうと、遺伝的な多様性が無くなってしまうことです。例えば、同じ種のサンゴでも、高水温に弱い群体Aと高水温に強い群体Bがいたとします。高水温に弱い群体Aと、高水温に強い群体Bの産卵日がずれてしまったら、群体Aは群体Bと交わることができません。つまり、群体Aの子供はずっと高水温に弱いままであり、白化して死んでしまいやすいサンゴなのです。 同じ種類のサンゴでも、群体によって環境に対するストレスの強さであったり、成長しやすさであったりは微妙に異なります。そのため、様々な遺伝子が混ざり合い、遺伝的な多様性が維持されることはその種類の生き物が存続していくうえでとても大切なのです。 次に原因です。断定はできませんが、いくつかの原因が考えられます。 1つ目は、やはり温暖化の影響。海水温が高いことにより、サンゴが産卵する初夏の海水温を感知しづらくなっているのではないかと考えられます。 2つ目は夜の明るさです。特に筆者がサンゴの産卵を観察した瀬底島周辺は、近くの市街地の街明かりが届くために暗闇にはなりません。そのため、満月の明るさや、満月から新月へと変わっていく明るさのリズムがなくなってしまうからであると思われます。一方で、沖縄県の慶良間諸島の阿嘉島では、街明かりをはじめとする人工光がほとんどないためか、サンゴの産卵はまとまった日に見られているようなのです。こうしてみると、夜の明るさがサンゴの産卵に重要であることが伺い知れますね。この先、サンゴの産卵はどのよう変化していくのでしょうか。。。 海と近いからこそ分かる変化 生き物の生態や不思議について調べていると、自然とどこかで人間の営みが関わってきます。それは良くも悪くも。サンゴという生き物を通じて、人と自然の共存がいかに難しく、課題であるのかを身近に感じました。それも自然あふれる沖縄だからこそ感じられる贅沢な疑問なのかもしれません。きっと誰しも、得意な事やずっと経験してきたことの中に、他の人から見たら大きな驚きのある疑問を持っているのではないでしょうか。比較的シリアスに書かせて頂きました。 執筆者 和泉 遼太郎
「サンゴの一斉産卵から見る環境の変化」
 今年の6月6日、沖縄県の瀬底島のサンゴが産卵しました。しかし、驚くべきことに産卵はその前後一週間で複数にわたり見られました。あれ?と思われたかもしれません。一般的に言われているのはサンゴの“一斉”産卵ですよね。そうなのです、実は過去数年で沖縄のサンゴの産卵は、一斉ではなくなってきているのです。今回はそんなサンゴの一斉産卵の実態についてご紹介します。 サンゴの産卵 サンゴは植物でもなく、岩でもなく動物です。そのためサンゴは産卵を行うことで繁殖を行います。一般的にはサンゴは初夏の満月の夜に産卵をするといわれています。この産卵がとても幻想的な光景であり、決まった時期にしか見られない貴重さもあることから、世間から広く知られるようになりました。
コユビミドリイシの産卵(2017年、瀬底島)
一斉産卵でなくなる問題と理由 そんなサンゴの一斉産卵ですが、これまで数日にばらけることは珍しいことではありませんでした。しかし過去数年で産卵のばらける度合が大きくなってきています。今年は沖縄県の瀬底島では約1週間にわたってサンゴの産卵が確認されました。また、昨年では産卵の予測日より2週間も早く産卵が確認されました。これまで以上に、サンゴの産卵日を捉えづらくなっているのが現状なのです。 では、何が問題で、何が原因なのでしょうか? まず問題は、同じ種類のサンゴで産卵日がばらけてしまうと、遺伝的な多様性が無くなってしまうことです。例えば、同じ種のサンゴでも、高水温に弱い群体Aと高水温に強い群体Bがいたとします。高水温に弱い群体Aと、高水温に強い群体Bの産卵日がずれてしまったら、群体Aは群体Bと交わることができません。つまり、群体Aの子供はずっと高水温に弱いままであり、白化して死んでしまいやすいサンゴなのです。 同じ種類のサンゴでも、群体によって環境に対するストレスの強さであったり、成長しやすさであったりは微妙に異なります。そのため、様々な遺伝子が混ざり合い、遺伝的な多様性が維持されることはその種類の生き物が存続していくうえでとても大切なのです。 次に原因です。断定はできませんが、いくつかの原因が考えられます。 1つ目は、やはり温暖化の影響。海水温が高いことにより、サンゴが産卵する初夏の海水温を感知しづらくなっているのではないかと考えられます。 2つ目は夜の明るさです。特に筆者がサンゴの産卵を観察した瀬底島周辺は、近くの市街地の街明かりが届くために暗闇にはなりません。そのため、満月の明るさや、満月から新月へと変わっていく明るさのリズムがなくなってしまうからであると思われます。一方で、沖縄県の慶良間諸島の阿嘉島では、街明かりをはじめとする人工光がほとんどないためか、サンゴの産卵はまとまった日に見られているようなのです。こうしてみると、夜の明るさがサンゴの産卵に重要であることが伺い知れますね。この先、サンゴの産卵はどのよう変化していくのでしょうか。。。 海と近いからこそ分かる変化 生き物の生態や不思議について調べていると、自然とどこかで人間の営みが関わってきます。それは良くも悪くも。サンゴという生き物を通じて、人と自然の共存がいかに難しく、課題であるのかを身近に感じました。それも自然あふれる沖縄だからこそ感じられる贅沢な疑問なのかもしれません。きっと誰しも、得意な事やずっと経験してきたことの中に、他の人から見たら大きな驚きのある疑問を持っているのではないでしょうか。比較的シリアスに書かせて頂きました。 執筆者 和泉 遼太郎
「サンゴの一斉産卵から見る環境の変化」
 今年の6月6日、沖縄県の瀬底島のサンゴが産卵しました。しかし、驚くべきことに産卵はその前後一週間で複数にわたり見られました。あれ?と思われたかもしれません。一般的に言われているのはサンゴの“一斉”産卵ですよね。そうなのです、実は過去数年で沖縄のサンゴの産卵は、一斉ではなくなってきているのです。今回はそんなサンゴの一斉産卵の実態についてご紹介します。 サンゴの産卵 サンゴは植物でもなく、岩でもなく動物です。そのためサンゴは産卵を行うことで繁殖を行います。一般的にはサンゴは初夏の満月の夜に産卵をするといわれています。この産卵がとても幻想的な光景であり、決まった時期にしか見られない貴重さもあることから、世間から広く知られるようになりました。
コユビミドリイシの産卵(2017年、瀬底島)
一斉産卵でなくなる問題と理由 そんなサンゴの一斉産卵ですが、これまで数日にばらけることは珍しいことではありませんでした。しかし過去数年で産卵のばらける度合が大きくなってきています。今年は沖縄県の瀬底島では約1週間にわたってサンゴの産卵が確認されました。また、昨年では産卵の予測日より2週間も早く産卵が確認されました。これまで以上に、サンゴの産卵日を捉えづらくなっているのが現状なのです。 では、何が問題で、何が原因なのでしょうか? まず問題は、同じ種類のサンゴで産卵日がばらけてしまうと、遺伝的な多様性が無くなってしまうことです。例えば、同じ種のサンゴでも、高水温に弱い群体Aと高水温に強い群体Bがいたとします。高水温に弱い群体Aと、高水温に強い群体Bの産卵日がずれてしまったら、群体Aは群体Bと交わることができません。つまり、群体Aの子供はずっと高水温に弱いままであり、白化して死んでしまいやすいサンゴなのです。 同じ種類のサンゴでも、群体によって環境に対するストレスの強さであったり、成長しやすさであったりは微妙に異なります。そのため、様々な遺伝子が混ざり合い、遺伝的な多様性が維持されることはその種類の生き物が存続していくうえでとても大切なのです。 次に原因です。断定はできませんが、いくつかの原因が考えられます。 1つ目は、やはり温暖化の影響。海水温が高いことにより、サンゴが産卵する初夏の海水温を感知しづらくなっているのではないかと考えられます。 2つ目は夜の明るさです。特に筆者がサンゴの産卵を観察した瀬底島周辺は、近くの市街地の街明かりが届くために暗闇にはなりません。そのため、満月の明るさや、満月から新月へと変わっていく明るさのリズムがなくなってしまうからであると思われます。一方で、沖縄県の慶良間諸島の阿嘉島では、街明かりをはじめとする人工光がほとんどないためか、サンゴの産卵はまとまった日に見られているようなのです。こうしてみると、夜の明るさがサンゴの産卵に重要であることが伺い知れますね。この先、サンゴの産卵はどのよう変化していくのでしょうか。。。 海と近いからこそ分かる変化 生き物の生態や不思議について調べていると、自然とどこかで人間の営みが関わってきます。それは良くも悪くも。サンゴという生き物を通じて、人と自然の共存がいかに難しく、課題であるのかを身近に感じました。それも自然あふれる沖縄だからこそ感じられる贅沢な疑問なのかもしれません。きっと誰しも、得意な事やずっと経験してきたことの中に、他の人から見たら大きな驚きのある疑問を持っているのではないでしょうか。比較的シリアスに書かせて頂きました。 執筆者 和泉 遼太郎