ニュースレター「サンゴ礁の自然環境」

2015年1月号

沖縄の潮間帯40年の変化 キーワード:沖縄、潮間帯、保全 地点番号35 恩納村瀬良垣恩納村:瀬良垣漁港の建設、 埋め立てにより潮間帯が消失している。

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2015年7月号

新種の生物を自分で発見して名前をつけるには?

▼経過報告:沖縄の潮間帯ー2014 全95地点中、伊江島と米軍基地内を除く90地点で調査を行いました。その内10地点で道路護岸や港湾整備、都市建設などの埋立てによって、調査地点の潮間帯は失われていました。その一方で、あまり多くの人が住まない地域では、40年前とほとんど変わらない状態が今なお残っていました。 調査を行った期間では、廃油ボールの漂着、赤土の堆積はほとんど観察されず、海岸10mあたりのゴミの量も40年前に比べて減少していました。これらのことから、環境汚染については40年前と比較して改善したと言えます。 ▼これからの課題 今後も調査を継続し、かつていた生き物が今も変わらずにいるのかを各地点で確認する必要があります。埋め立て以外にも、護岸や防波堤などの建設、淡水や生活排水の流入といった大小様々な変化が起こっています。そこに住む生き物がどのように変化したのかを見れば、その場所で実際に起こっている環境問題に気づくことができるはずです。 経済的な発展はもちろん重要なことです。しかし、調査中に目にした埋め立て後の空地や、利用頻度の少ない港、防災効果の見込みが薄い護岸などは、本当に必要だったのだろうかと思わずにはいられません。調査結果に基づいて、的確な意見を発信していきたいと考えています。 これから40年後、私たちと同じように写真を片手に沖縄を歩いて回る人たちが、同じ景色や生き物に出会うことができるかどうかは、今の私たちの選択にかかっているのだと思います。 執筆者 水山 克

沖縄の潮間帯40年の変化

キーワード:沖縄、潮間帯、保全

 

地点番号35 恩納村瀬良垣恩納村:瀬良垣漁港の建設、

埋め立てにより潮間帯が消失している。

▼沖縄の潮間帯ー1974 ある日、大学の図書館でいつものように沖縄の サンゴ礁に関する資料を探していると、一冊の古 い報告書が目に留まりました。今から遡ること4 0年前、「沖縄の潮間帯ー1974年」と記され たその報告書には、沖縄本島と一部の周辺離島の 約100地点について、「どんな生き物が住み」、 「人々の生活によって生き物たちがどのような影 響を受けているのか」が詳細に記録さ れていました。ちょうど沖縄が本土に返還され、 急激に開発が進められていた頃の話です。 それらの膨大な記録の中に、失われゆく自然に 対する当時の危機感や、科学者として取り組んだ 強い意志を感じとり、それはまるで40年前から 受け取った手紙を読んでいるかのような気分で した。 「今の沖縄はいったいどうなっているのか」、と。 「あなたたちにはいったい何ができるのか」、と。 2014年春、私たちは追跡調査を開始しました。
▼地点番号35 恩納村瀬良垣 40年前に撮影された現場写真を手掛かり に、私たちは沖縄中の調査地点を順番に探し て行きました。冒頭に掲載した4枚の写真は、 恩納村瀬良垣という場所の様子です。40年 間で港が建設されるとともに海岸線が埋め立 てられ、かつての調査地点であった潮間帯 (潮の満ち引きによって出現する陸地)が消 失していました。 「昔の沖縄は~」という話を耳にすること はあっても、このように写真を並べてみて初 めて、40年前と現在がどう違っているのか を実際に知ることができました。 現場写真を撮影した後は、過去の調査と同様に海岸線10mあたりのゴミを拾い集め、種類と個数を記録し、廃油ボールの漂着や赤土の堆積などの汚染状況について記録して行きました。 調査風景:2014年6月7日 恩納村名嘉眞(西)にて撮影
▼経過報告:沖縄の潮間帯ー2014 全95地点中、伊江島と米軍基地内を除く90地点で調査を行いました。その内10地点で道路護岸や港湾整備、都市建設などの埋立てによって、調査地点の潮間帯は失われていました。その一方で、あまり多くの人が住まない地域では、40年前とほとんど変わらない状態が今なお残っていました。 調査を行った期間では、廃油ボールの漂着、赤土の堆積はほとんど観察されず、海岸10mあたりのゴミの量も40年前に比べて減少していました。これらのことから、環境汚染については40年前と比較して改善したと言えます。
▼これからの課題 今後も調査を継続し、かつていた生き物が今も変わらずにいるのかを各地点で確認する必要があります。埋め立て以外にも、護岸や防波堤などの建設、淡水や生活排水の流入といった大小様々な変化が起こっています。そこに住む生き物がどのように変化したのかを見れば、その場所で実際に起こっている環境問題に気づくことができるはずです。 経済的な発展はもちろん重要なことです。しかし、調査中に目にした埋め立て後の空地や、利用頻度の少ない港、防災効果の見込みが薄い護岸などは、本当に必要だったのだろうかと思わずにはいられません。調査結果に基づいて、的確な意見を発信していきたいと考えています。 これから40年後、私たちと同じように写真を片手に沖縄を歩いて回る人たちが、同じ景色や生き物に出会うことができるかどうかは、今の私たちの選択にかかっているのだと思います。 執筆者 水山 克
▼沖縄の潮間帯ー1974 ある日、大学の図書館でいつものように 沖縄のサンゴ礁に関する資料を探している と、一冊の古い報告書が目に留まりました。 今から遡ること40年前、「沖縄の潮間帯 ー1974年」と記されたその報告書には、 沖縄本島と一部の周辺離島の約100地点 について、「どんな生き物が住み」、「人 々の生活によって生き物たちがどのような 影響を受けているのか」が詳細に記録され ていました。 ちょうど沖縄が本土に返還され、急激に開 発が進められていた頃の話です。 それらの膨大な記録の中に、失われゆく 自然に対する当時の危機感や、科学者とし て取り組んだ強い意志を感じとり、それは まるで40年前から受け取った手紙を読ん でいるかのような気分でした。 「今の沖縄はいったいどうなっているのか」、と。 「あなたたちにはいったい何ができるのか」、と。 2014年春、私たちは追跡調査を開始しました。
▼地点番号35 恩納村瀬良垣 40年前に撮影された現場写真を手掛 かりに、私たちは沖縄中の調査地点を順 番に探して行きました。冒頭に掲載した 4枚の写真は、恩納村瀬良垣という場所 の様子です。40年間で港が建設される とともに海岸線が埋め立てられ、かつて の調査地点であった潮間帯(潮の満ち引 きによって出現する陸地)が消失してい ました。 「昔の沖縄は~」という話を耳にする ことはあっても、このように写真を並べ てみて初めて、40年前と現在がどう違っているのかを実際に知ることができました。 現場写真を撮影した後は、過去の調査と同様に海岸線10mあたりのゴミを拾い集め、種類と個数を記録し、廃油ボールの漂着や赤土の堆積などの汚染状況について記録して行きました。 調査風景:2014年6月7日 恩納村名嘉眞(西)にて撮影
▼経過報告:沖縄の潮間帯ー2014 全95地点中、伊江島と米軍基地内を除く90地点で調査を行いました。その内10地点で道路護岸や港湾整備、都市建設などの埋立てによって、調査地点の潮間帯は失われていました。その一方で、あまり多くの人が住まない地域では、40年前とほとんど変わらない状態が今なお残っていました。 調査を行った期間では、廃油ボールの漂着、赤土の堆積はほとんど観察されず、海岸10mあたりのゴミの量も40年前に比べて減少していました。これらのことから、環境汚染については40年前と比較して改善したと言えます。 ▼これからの課題 今後も調査を継続し、かつていた生き物が今も変わらずにいるのかを各地点で確認する必要があります。埋め立て以外にも、護岸や防波堤などの建設、淡水や生活排水の流入といった大小様々な変化が起こっています。そこに住む生き物がどのように変化したのかを見れば、その場所で実際に起こっている環境問題に気づくことができるはずです。 経済的な発展はもちろん重要なことです。しかし、調査中に目にした埋め立て後の空地や、利用頻度の少ない港、防災効果の見込みが薄い護岸などは、本当に必要だったのだろうかと思わずにはいられません。調査結果に基づいて、的確な意見を発信していきたいと考えています。 これから40年後、私たちと同じように写真を片手に沖縄を歩いて回る人たちが、同じ景色や生き物に出会うことができるかどうかは、今の私たちの選択にかかっているのだと思います。 執筆者 水山 克
▼沖縄の潮間帯ー1974 ある日、大学の図書館でいつものよう に沖縄のサンゴ礁に関する資料を探して いると、一冊の古い報告書が目に留まり ました。今から遡ること40年前、「沖 縄の潮間帯ー1974年」と記されたそ の報告書には、沖縄本島と一部の周辺離 島の約100地点について、「どんな生 き物が住み」、「人々の生活によって生 き物たちがどのような影響を受けている のか」が詳細に記録されていました。 ちょうど沖縄が本土に返還され、急激に 開発が進められていた頃の話です。 それらの膨大な記録の中に、失われゆ く自然に対する当時の危機感や、科学者 として取り組んだ強い意志を感じとり、それはまるで40年前から受け取った手紙を読ん でいるかのような気分でした。 「今の沖縄はいったいどうなっているのか」、と。 「あなたたちにはいったい何ができるのか」、と。 2014年春、私たちは追跡調査を開始しました。
▼地点番号35 恩納村瀬良垣 40年前に撮影された現場写真を手 掛かりに、私たちは沖縄中の調査地点 を順番に探して行きました。冒頭に掲 載した4枚の写真は、恩納村瀬良垣とい う場所の様子です。40年間で港が建 設されるとともに海岸線が埋め立てら れ、かつての調査地点であった潮間帯 (潮の満ち引きによって出現する陸地) が消失していました。 「昔の沖縄は~」という話を耳にする ことはあっても、このように写真を並べ てみて初めて、40年前と現在がどう違っているのかを実際に知ることができました。 現場写真を撮影した後は、過去の調査と同様に海岸線10mあたりのゴミを拾い集め、種類と個数を記録し、廃油ボールの漂着や赤土の堆積などの汚染状況について記録して行きました。 調査風景:2014年6月7日 恩納村名嘉眞(西)にて撮影
▼経過報告:沖縄の潮間帯ー2014 全95地点中、伊江島と米軍基地内を除く90地点で調査を行いました。その内10地点で道路護岸や港湾整備、都市建設などの埋立てによって、調査地点の潮間帯は失われていました。その一方で、あまり多くの人が住まない地域では、40年前とほとんど変わらない状態が今なお残っていました。 調査を行った期間では、廃油ボールの漂着、赤土の堆積はほとんど観察されず、海岸10mあたりのゴミの量も40年前に比べて減少していました。これらのことから、環境汚染については40年前と比較して改善したと言えます。
▼これからの課題 今後も調査を継続し、かつていた生き物が今も変わらずにいるのかを各地点で確認する必要があります。埋め立て以外にも、護岸や防波堤などの建設、淡水や生活排水の流入といった大小様々な変化が起こっています。そこに住む生き物がどのように変化したのかを見れば、その場所で実際に起こっている環境問題に気づくことができるはずです。 経済的な発展はもちろん重要なことです。しかし、調査中に目にした埋め立て後の空地や、利用頻度の少ない港、防災効果の見込みが薄い護岸などは、本当に必要だったのだろうかと思わずにはいられません。調査結果に基づいて、的確な意見を発信していきたいと考えています。 これから40年後、私たちと同じように写真を片手に沖縄を歩いて回る人たちが、同じ景色や生き物に出会うことができるかどうかは、今の私たちの選択にかかっているのだと思います。 執筆者 水山 克
▼沖縄の潮間帯ー1974 ある日、大学の図書館でいつもの ように沖縄のサンゴ礁に関する資料 を探していると、一冊の古い報告書 が目に留まりました。今から遡るこ と40年前、「沖縄の潮間帯ー19 74年」と記されたその報告書には、 沖縄本島と一部の周辺離島の約10 0地点について、「どんな生き物が 住み」、「人々の生活によって生き 物たちがどのような影響を受けてい るのか」が詳細に記録されていまし た。ちょうど沖縄が本土に返還され、 急激に開発が進められていた頃の話 です。 それらの膨大な記録の中に、失われゆく自然に対する当時の危機感や、科学者として取り組んだ強い意志を感じとり、それはまるで40年前から受け取った手紙を読んでいるかのような気分でした。 「今の沖縄はいったいどうなっているのか」、と。 「あなたたちにはいったい何ができるのか」、と。 2014年春、私たちは追跡調査を開始しました。
▼地点番号35 恩納村瀬良垣 40年前に撮影された現場写真を 手掛かりに、私たちは沖縄中の調査 地点を順番に探して行きました。冒 頭に掲載した4枚の写真は、恩納村 瀬良垣という場所の様子です。40 年間で港が建設されるとともに海岸 線が埋め立てられ、かつての調査地 点であった潮間帯(潮の満ち引きに よって出現する陸地)が消失してい ました。 「昔の沖縄は~」という話を耳にすることはあっても、このように写真を並べてみて初めて、40年前と現在がどう違っているのかを実際に知ることができました。 現場写真を撮影した後は、過去の調査と同様に海岸線10mあたりのゴミを拾い集め、種類と個数を記録し、廃油ボールの漂着や赤土の堆積などの汚染状況について記録して行きました。 調査風景:2014年6月7日 恩納村名嘉眞(西)にて撮影
▼経過報告:沖縄の潮間帯ー2014 全95地点中、伊江島と米軍基地内を除く90地点で調査を行いました。その内10地点で道路護岸や港湾整備、都市建設などの埋立てによって、調査地点の潮間帯は失われていました。その一方で、あまり多くの人が住まない地域では、40年前とほとんど変わらない状態が今なお残っていました。 調査を行った期間では、廃油ボールの漂着、赤土の堆積はほとんど観察されず、海岸10mあたりのゴミの量も40年前に比べて減少していました。これらのことから、環境汚染については40年前と比較して改善したと言えます。
▼これからの課題 今後も調査を継続し、かつていた生き物が今も変わらずにいるのかを各地点で確認する必要があります。埋め立て以外にも、護岸や防波堤などの建設、淡水や生活排水の流入といった大小様々な変化が起こっています。そこに住む生き物がどのように変化したのかを見れば、その場所で実際に起こっている環境問題に気づくことができるはずです。 経済的な発展はもちろん重要なことです。しかし、調査中に目にした埋め立て後の空地や、利用頻度の少ない港、防災効果の見込みが薄い護岸などは、本当に必要だったのだろうかと思わずにはいられません。調査結果に基づいて、的確な意見を発信していきたいと考えています。 これから40年後、私たちと同じように写真を片手に沖縄を歩いて回る人たちが、同じ景色や生き物に出会うことができるかどうかは、今の私たちの選択にかかっているのだと思います。 執筆者 水山 克